本駒込の家

東京都内の古い歴史を持つ街区に建つ住宅である。敷地は急勾配の路地に面し、周囲には古くからの石垣が雛壇状に残され、戸建住宅やアパートが互いに軒を接するように建て込んでいる。こうした極めて高密な環境の中で、十分な自然光と風通しを得られる開放的な室内を実現することと、家族の時間を屋外で過ごすことが好きな建築主のために、くつろいで過ごせる、開放性とプライバシーを両立した外部空間を実現することが、設計上の課題となった。

私たちはまず、2階の床を帽子の「つば」のように建物の東側と北側に向かって張り出し、リビングルームのある2階を周囲の地面から切り離すような全体構成を考えた。この「つば」によって道路から見上げる視線がカットされ、上階部分を開放的に作ることが可能となる。東の道路側に向かって張り出した箇所は、その下部を駐車スペースとエントランスポーチ、その上部を空に向かって開かれたテラスとした。リビングルームと一体となったテラスは、周囲をガラス繊維のスクリーンと木製ルーバーで囲い、明るさと風通しを両立させている。

敷地と北側の隣地との間には高低差があるため、寝室群が配置された3階は北側に隣接する住宅の屋根よりも高く、開放的な環境が得られる。3階の中央に設けられた廊下には、南北それぞれに天井高さまでの開口部を設け、自然光に満ち、かつ、風の通り抜ける半外部的な場所を作り出した。建物の中央を上下に貫くらせん階段は、このようにして得られた上階の自然光を、再下階のエントランスホールまで届ける光井戸となるように計画されている。

夜になると、ガラス繊維のスクリーンがリビングルームの明かりを受けて街路に灯る。暗かった路地の奥に、行灯のような明かりをもたらす小さな住宅が誕生した。


名称:本駒込の家
施主:個人
所在地:東京都文京区
用途:戸建住宅
面積:116.50m2
竣工:2017年11月
基本・実施設計:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・古橋一真)
監理:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・古橋一真)
構造設計:小西泰孝建築構造設計(小西泰孝・円酒昴・滝口雅之)
照明デザイン:ソノベデザインオフィス(園部竜太)
施工:新都市建設株式会社(小林千)
撮影:吉村昌也(コピスト)

Project name:House in Honkomagome
Client:Personal
Project site:Tokyo, Japan
Function:Private House
Size:116.50m2
Design & Supervision:Atsushi+Naoko Kasuya, Kazuma Furuhashi(KAO)
Structural Design:Yasutaka Konishi, Noboru Enshu, Masayuki Takiguchi(KSE)
Lighting Design:Ryuta Sonobe(Sonobe Design)
Contractor:Shintoshi-Kensetsu Co.,LTD.
Photo:Masaya Yoshimura(Copist)