つくばの家

この住宅の敷地は近年、開発が急速に進んだ一角に位置する。駅から近く利便性に優れる一方、敷地は大通りから近く、周囲の風景が今後どのように変化していくのか、予測の難しい場所である。こうした条件のもと、この家をデザインするにあたり、私たちは二つの方針を考えた。
一つ目の方針は、周囲に依存しない自律的で穏やかな住空間を作ることである。
中国の杭州市に、中国の二大漢方薬局の一つ「胡慶餘堂 (こけいよどう)」という19世紀の建物がある。この建物は、敷地全体を白い石膏で塗られた壁で周囲の街路から囲い込み、その内側に多くの中庭や、半屋外のように光の満ちたホールなど、街路とは別世界のような、多様で豊かな空間が展開している。
私たちは、これを一つのモデルに、石膏に替えて鋼板と木製のスクリーンで敷地外周を囲み、周囲から守られた開放的な生活の場所を作った。
二つ目の方針は、単に周囲から住まいを隔てるのではなく、この住宅で「新しい風景をつくる」ことである。
外周を囲む金属製のスクリーンには、石のような独特の風合いを持たせている。現代の一般的な住宅の多くが、レンガや木材を擬したサイディングに包まれている中にあって、重厚かつ機能本意でもある厚い鋼板の表情は、掴みどころのない風景に確かなアンカーポイントを作り出す。
鋼板のスクリーンは、ところどころに穴の空いたパネルを使用することで、必要に応じて内側に光と風を取り込み、一方、夜はレース越しのような淡い光を周囲の街路にもたらす。スクリーンの足下には植栽を敷き詰め、交差点に面した角では、隙間から高木が姿を覗かせる。
新しい街区の角に建つ、この「金属のレースに包まれた家」が、人々の記憶に残る新しい風景を作り出すことを期待している。

名称:つくばの家
施主:個人
所在地:茨城県つくば市
用途:戸建住宅
面積:147.25m2
竣工:2013年2月
基本・実施設計:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・加藤裕子)
監理:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・加藤裕子)
構造設計:長坂設計工舎(長坂健太郎・馬上友弘)
照明デザイン:ソノベデザインオフィス(園部竜太)
施工:株式会社 柴木材店(福井靖宏)
撮影:吉村昌也(Copist & the Brushworks)・カスヤアーキテクツオフィス

Project name: House in Tsukuba
Client: Personal
Project site: Tsukuba, Japan
Function: Private House
Size: 147.25m2
Design & Supervise: Atsushi+Naoko Kasuya, Hiroko Kato(KAO) 
Structural Design: Kentaro Nagasaka, Tomohiro Magami (Ken Nagasaka Engineering Network)
Lighting Design: Ryuta Sonobe(Sonobe Design)
Contractor: Shiba Mokuzai Co.,Ltd.(Yasuhiro Hukui)
Photo: Masaya Yoshimura(Copist & the Brushworks), Atsushi Kasuya(KAO)