軒と中庭の家(松本の家IV)

敷地をはじめて訪れたとき、私たちの印象に残ったのは、敷地西側に接する道の緩やかなカーブの連続と、沿道に植えられた生垣と花々がつくり出す、静かで暖かな雰囲気だった。緩やかなカーブは、この道が敷地近くを流れる小川の土手道であり、古くからこの場所にあったのだということを暗示している。この道沿いにもうひとつ「小さな花壇」を加えることで、かつてそこにあった穏やかな田園風景を連想させ、また、その花々が映える「背景」としての住宅の佇まいを考えたいと思った。
道路に面した建物は平屋で高さが抑えられており、北側に大きく張り出した庇(ひさし)とあいまって、水平線が強調された外観を作り出している。西側道路に沿った「花壇」の背景となる白い壁面にはわずかな開口部しかないため、建物は静かな壁のような佇まいとなり、北側のカーポートを兼ねた大きな庇(ひさし)は、人を迎える玄関に相応しい外観を作り出す。
外観の静謐な雰囲気は、中に入ると一変する。南側に向けて開かれた陽だまりの中庭を囲むように配置された諸室には、それぞれ開口部が設けられ、中庭越しに家族が向き合うことで、気取らない雰囲気が作り出される。
2世帯の住宅は、それぞれ独立した玄関を持ち、キッチン・リビング・ダイニングも別個に備えているが、2世帯が中庭を挟んで向かい合い、互いの雰囲気を伝え合うように計画されている。また、1階のトイレ、バスルームは2世帯の中間に位置し、どちらの世帯からも「離れ」となる位置に計画されている。これは互いの家事負担を減らし、気遣いも極力少なくて済むような、現実的な配慮によるものである。
敷地南西の勝手口から子世帯に至る外部通路は、親世帯のリビングルーム南側に接する「縁側」のような役割も兼ねている。この「縁側」が、ごく自然に世代を超えたコミュニケーションを日常生活にもたらすことが、設計者としての私たちの願いである。

名称:軒と中庭の家(松本の家Ⅳ)
施主:個人
所在地:長野県松本市
用途:戸建住宅
面積:167.73m2
竣工:2017年12月
基本・実施設計:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・平木かおる)
監理:カスヤアーキテクツオフィス(粕谷淳司・粕谷奈緒子・平木かおる)
構造設計:長坂設計工舎(長坂健太郎)
照明デザイン:ソノベデザインオフィス(園部竜太)
施工:松本土建株式会社(高木時浩・宮澤昌弘)
撮影:吉村昌也(Copist & the Brushworks)

Project name:House in Matsumoto Ⅳ
Client:Personal
Project site:Nagano, Japan
Function:Private House
Size:167.73m2
Design & Supervise:Atsushi+Naoko Kasuya, Kaoru Hiraki(KAO)
Structural Design:Ken Nagasaka (Ken Nagasaka Engineering Network)
Lighting Design:Ryuta Sonobe(Sonobe Design)
Contractor:Matsumoto-Doken Co.,Ltd.(Tokihiro Takagi, Masahiro Miyazawa)
Photo:Masaya Yoshimura(Copist & the Brushworks)